競売資料の見方(3点セット)

競売物件の購入には絶対に欠かせない資料である 所謂「3点セット」。この3点セットとはどのようなものなのでしょうか?3点セットとは、競売になっている各物件について裁判所が調査・作成する「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の3つの構成からなる資料のことです。 この3つがセットになっているので一般的に「3点セット」と呼ばれています。 3点セットは「期間入札の公告」と併せて公開されます。

では、その3点セットとはそれぞれどのような内容のものが記載されていているのかを、順を追って解説していきたいと思います。

なお トップページでは、資料によく出てくる用語の解説も収めました。是非参考になさって下さい!

初心者の為の「物件明細書」記載文言の説明

注) 説明文の「強制執行」とは、民事執行法第83条の、引渡命令に基づく場合を前提としています。

Q1、「上記賃借権は最先の賃借権である。期限後の更新は買受人に対抗できる。」

 

その物件に設定された(根)抵当権より前から、賃借人がいる場合です。

買受人は、契約期間終了時「もう更新はしない。」と主張しても、拒否されたら、お終い。

賃料不払いでもない限り、立ち退かせるのは困難です。

その分、売却基準価額は相当に安くなっています。

賃料を貰うだけなら、面白い案件です。

事例・・・法務局で謄本の日付を確認の事
事例・・・法務局で謄本の日付を確認の事

Q2、「上記賃借権は抵当権設定後の賃借権である。期限後の更新は買受人に対抗できない。」

 

その物件に(根)抵当権が設定された後に賃貸契約をした賃借人がいる場合です。

賃借人は、契約更新したいと言っても、買受人に賃借権を主張は出来ません。

 

Q3、「賃借権の存否は不明であるが、これを引き受けるものとして売却条件を定めた。」

 

調査しても賃借権の有無が分らない場合があります。

その場合、賃借権が存在し、買受人がその賃貸借契約を引き受けるものとして、売却基準価額を算出しています。

売却基準価額はかなり安く決められます。

火傷する場合もありますので、要注意です。

 

Q4、「売却基準価額は、左記敷金(保証金)の返還義務を考慮して定めた。」

 

賃借人が旧所有者に預託した敷金(保証金)を買受人が負担する場合です。

売却基準価額算出の際に、敷金(保証金)の額を控除しました、という意味です。

(根)抵当権が設定された物件で平成16年4月1日以降に新たに締結された賃貸借契約では関係なくなりました。

 

Q5、「本件所有者が占有している。」

 

所有者が占有している物件です。

占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

 

Q6、「○○が占有している。△△の占有は認められない。」

 

裁判所が認めた占有者が「○○」です。

「△△」は、占有を主張しますが、実態がない等と判断された場合です。

落札後、買受人に何か言ってくるかも知れません。

 

Q7、「(株)○○が占有している。同社の代表者は本件所有者である。」

 

社長の個人名義の不動産に、その会社が占有しています。

占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

 

Q8、「○○が占有している。同人は実行された抵当権の債務者である。」

 

競売申し立てをした金融機関等からお金を借りた本人が占有しています。

占有者は居座ることができません。ごねれば、強制執行で退去させられます。

 

Q9、「○○が占有している。同人は実行された抵当権の設定時の所有者であった。」

 

現在の所有者ではなく、競売を申立てている金融機関等が、その物件に融資した時の所有者が占有しています。

占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

 

Q10、「○○が占有している。同人は設定された抵当権の設定後の所有者であった。」

 

競売を申し立てている金融機関等が、その物件に融資した時の所有者ではなく、その後、所有権を取得した人が占有しています。占有者は居座ることができません。ごねれば、強制執行で退去させられます。

 

Q11、「○○が占有している。同人は実行された抵当権以外の債務者である。」

 

競売を申し立てている金融機関等が設定している担保権の債務者では無く、他の抵当権の債務者が占有しています。

強制執行ができない場合もありますので、注意しましょう。

 

Q12、「○○が占有している。同人の占有権原は使用借権と認められる。」

 

賃料を払わずに無償で借りていることです。

建物の占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

建物の敷地が使用貸借(親の土地を無償で借りて子供名義の家を建築など・・)の場合で、土地のみが第三者に落札され、その第三者から「建物収去土地明渡」の裁判を起こされますと、建物所有者が勝訴する可能性は相当低いと思って下さい。

 

Q13、「○○が占有している。同人の賃借権は正常なものとは認められない。」

 

占有者は、普通の賃借人ではない、と裁判所は認定しています。

占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

 

Q14、「○○が占有している。同人の占有(又は賃借権)は(仮)差押えに後れる。」

 

(仮)差押登記がついてから、占有した人です。

占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

仮差押の後の占有の場合、その仮差押が、売却までに効力を失いますと、状況によっては、強制執行での退去を求めることが出来なくなる場合もありますので、要注意です(東京地裁執行センター編、「競売ファイル・競売手続説明書」より引用)

 

Q15、「○○が占有している。同人の占有(又は賃借権)は滞納処分による差押えに後れる。」

 

滞納処分による差押え登記がついてから、占有した人です。

占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

ただし、その差押え登記が売却までに効力を失いますと、状況によっては、強制執行での退去を求めることが出来なくなる場合もありますので、要注意です(東京地裁執行センター編、「競売ファイル・競売手続説明書」より引用)

 

Q16、「○○が占有している。同人の賃借権は抵当権に後れる。ただし、代金納付日から6ケ月間明渡しが猶予される。」

 

占有者は、買受人が代金納付手続きをすると、占有権原がなくなる場合です。

ただし、退去する(買受人に建物を明渡す)時期が6ケ月猶予されます。

その間は、占有者は、建物使用の対価を買受人に支払うことになります。

「占有者に対する引渡命令の申立て」は、代金納付後6ケ月経過してから3月以内にするようになります。

民法395条を参照して下さい。

 

Q17、「○○が占有している。同人の賃借権は、差押え(仮差押え・滞納処分による差押え)後に期限が経過している。」

 

占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

 

Q18、「転借人(又は転使用借人)○○が占有している。」

 

占有者は居座ることができません。

ごねれば、強制執行で退去させられます。

 

Q19、「本件土地上に、売却対象外建物(家屋番号○番)が存在する。」

 

第三者所有の建物が建っている土地の競売です。

その建物が法的にどのような環境にあるかを見極めるのが大切です。

難易度高く一般の方はパスした方が良い物件です。

 

Q20、「○○が占有している。同人の占有権原は使用借権と認められる。同人所有の売却対象外建物(家屋番号○番)が本件土地上に存在する。」

 

建物所有者が只で土地を敷地として占有しています。

買受人は、建物所有者が立退きに応じない場合は、裁判をすれば、勝訴の可能性極めて大です。

 

Q21、「○○が占有している。同人が改装費(又は修繕費・造作費)を支出した旨主張している。」

 

占有者が改装費、修繕費、造作費を要求している場合です。

いわゆる占有屋が買受人に金銭要求するのに利用される場合があります。

 

Q22、「○○が占有している。同人が改装費(又は修繕費・造作費)を支出した旨主張している。最低売却価額は上記改装費(又は修繕費等)を考慮して定めた。」

 

占有者が改装費、修繕費、造作費を要求している場合です。

裁判所が、占有者の主張を認定して、売却基準価額算出の際、買受人の負担となる、その費用を控除しています。